観客を守れ  −球場の新たな取り組み  【03.3.26 NHK】


オリックスの本拠地GS神戸では、選手の迫力あるプレイを目の前で見てもらおうとスタジアムを改装しました。
これまではファウルグラウンドだった部分があるんですが、そこの一塁側と三塁側に、合わせて580席の観客席が新たに設置されました。
さらに、この観客席の前にあった高さ3.6mの金網を全て取り払いました。
グラウンドとの間にあるのは高さ60cm余りのフェンスだけです。
ファンの人からは憧れの選手が間近で見られると大好評なんですが、一方で新たな問題が起きています。
球場の新たな取り組みを取材しました。
ファウルグラウンドに大きくせり出した観客席、その名も「フィールドシート」アメリカの大リーグを真似てつくられました。
フェアゾーンまでの距離はわずか9mです。
先週日曜日に行われたOP戦でも、この席から真っ先に埋まる人気ぶりでした。
観客 「いいですね、やっぱり近いというところですよね 選手もすぐ見えますし」
観客 「サインとかもらえるからいい」
しかし、金網が無くなった為、速いファウルボールが飛び込み、観客がケガをする危険性が増えました。
GS神戸では、今シーズンから全ての警備員が市民救命士の資格の取得を目指しています。
市民救命士は、ケガ人の応急手当の知識などを身につけた人を神戸市が認定する制度です。
警備員のまとめ役石垣英志さん(球団職員)、市民救命士の資格を持っています。
これまでに警備員全員の70%にあたる40人余りが資格を取得しています。
石垣さん 「フィールドシートが選手と近いという部分でそれに伴って打球ですね、ファウルボールとか送球とか飛び込んでくる想定が出来ましたので、それに付随してのケガの手当が出来るようにということで警備員の指示を出しております
石垣さんの一番の心配は満員のフィールドシートです。
他の警備員と共にボールの行方に目を光らせています。
フィールドシートには試合中、常に専属の警備員を配置しています。
石垣さん達の仕事は観客のケガなど不測の事態に対応することだけではありません。未然にケガを防ぐ為、ボールを避ける特製ボードの使用方法を教えるのも重要な仕事です。

観客 「安心ですね、知らなかったけど」
観客 「少しは安心かなと思いますけど 子ども小さいんでね 大丈夫かなと思いますけど」
この日もケガ人はなく、試合は無事終わりました。石垣さんは最後の一人がスタンドを後にするまで見届けます。

石垣さん 「安心して入って戴いてですね、GSに来て戴くお客さんの数が増えればというのがメインですので 安心して来て戴くことを望みます
---この新しく出来たフィールドシート、かなり人気があるようですが、
例えばOP戦などでですね、実際ファウルボールが飛び込んだケースというのはあったんですか?


GS神戸では今年6試合のOP戦が行われました。これまでにフィールドシートに直接打球が飛び込んだケースは9回、そのうちライナー性の速いファウルボールが1回ありました。
幸いケガ人はなく、市民救命士が活躍するという場面はありませんでしたが、一試合に1球以上という割合でボールが飛び込んでいます。
---このGS神戸のようにですね、応急手当の出来るスタッフを球場に配置するという取り組みは他でも進んでいるんでしょうか?

今のところ、プロ野球のホームグラウンドで試合中の観客席に常に応急手当の出来るスタッフを配置しているのはこのGS神戸だけなんです。
スタジアムでは、今年中には全ての警備員が市民救命士の資格を取得する他、更にジュースの販売員など球場で働くおよそ200人全員も資格を取得する予定です。