【4】勝った翌日はセールします 
                                                                  
地元に愛され 真の市民球団に

 プロ野球・大阪近鉄バファローズの本拠地「大阪ドーム」(大阪市西区)の最寄り駅、JR大正駅の改札口を出ると、駅前からドームへ通じる歩道上にいくつものワゴンが並ぶ。地元・大正橋商店街が実施しているワゴンセールの光景だ。
 販売しているのは、コーヒーやおにぎりなど。店主たちが「いらっしゃい」「どうですか」などと熱心に通行人たちに声をかけていた。
 同商店街の会員約30店舗のうち10店舗前後が出店。ドームで近鉄が勝った翌日には、「うってまえDAY」と題して参加店舗で割引セールなども企画している。
 和田公男会長(65)は「大阪ドームは、地元にとっては新参者。でも、今ではなくなったら困る運命共同体です。そのため、バファローズを応援するのは当然のことです」と気概をみせる。
 そんな商店会の声援にこたえるように、近鉄は今季、大阪ドームの開幕6連戦で球団史上初の5連勝という絶好のスタートを切った。
 和田さんが経営するうどん店「大正庵」では連日、一割引のセールが続いた。「いきなりの連勝で戸惑っています。10連勝の時には、何かイベントを考えないといけませんなあ」と笑顔が止まらない。
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 一方、神戸市長田区の丸五市場、新長田一番街、本町筋商店街、六間道商店街はオリックス・ブルーウェーブを応援するため、今シーズンから「ビクトリーセールキャンペーン」を始めた。
 こちらはオリックスの全140試合が対象で、オリックスが勝った翌日には計約170店舗のどこかでセールが開催される。内容などは各商店街に設置されたボードに告知される。
 企画した神戸ながたTMOの東朋治マネージャーは「ブルーウェーブが勝てば、お客さんは商店街で何かがあると思ってきてくれる。つまり、試合結果が掲載された新聞が、そのままチラシになるわけです。こうした活動を続けていけば、野球に興味のない主婦層などにも浸透し、チームを応援する機運が高まるきっかけになると思います」と説明する。
 ところが、肝心のオリックスは開幕5試合目でようやく初勝利。2日に初めてのセールが開催され、丸五市場では会員約30店舗のうち約20店舗が参加した。
 同市場の西村政之理事長(59)は「会員のほとんどは、阪神か巨人ファン。でも、パ・リーグはオリックスを応援することで統一しています。昨年の成績からいえば最低でも50回、本音は80回以上はセールをしたいですね」と、地元球団の活躍に期待を寄せる。
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♪私を野球に連れてって あの大観衆の中に連れてって…
 野球の本場・米国では、試合が七回の裏の攻撃を迎える前、観客全員が立ち上がってホームチームの応援歌ではなく、「私を野球に連れてって」という歌の合唱を始める。野球が市民生活の中に浸透していることを示すエピソードだ。
 地元に根ざした活動を通じてファン獲得に意欲を燃やす近鉄とオリックスが、真の市民球団になれるかどうか。
 そのためにも地元商店街の強力なバックアップは不可欠だが、大正橋商店会の和田会長はこう注文をつける。
 「ホーム球場で面白いゲームを見せることが、地元に愛される球団への近道。ホーム球場での勝率は七割くらいにしてほしいですね」   =おわり

(03.4.7) 産経新聞 [格清政典]     

※サンテレビBW戦中継で流れた丸五市場ビクトリーセールCMは こちら