【12】 球界12年 言わせてもらいます
                                                                  

オリックス前代表 井箟重慶さん
聞き手 村上敏彦記者

昨春大学教授に就任 −プロ・アマ野球で思う

 村上: 井箟さんは昨年四月、関西国際大学(兵庫県三木市)の教授に就任されました。どんな授業を担当されているんですか。

 井箟: 大学には経営学部と人間学部があり、私は経営学部の所属です。担当の分野はオリックス時代に経験したスポーツ・マネジメントをはじめベンチャービジネス、工業経営論、さらに人事労務管理などです。学長補佐としての大学の経営面への提言、それに関連した少子化問題にも携わっています。

 村上: 教える立場としての基本的な考え方は。

 井箟: 学問的というよりも、経験に基づいた実践教育に重点を置いています。出席は厳しくとり、試験よりもレポートで採点します。講義をしっかり聴いていないと、中身のあるレポートは書けませんからね。

 村上: 野球との縁は切れず、教授のかたわら、野球部副部長の肩書もあるんですね。

 井箟: 大学の方針として野球に力を入れることになり、部の強化に取り組んでいるところです。創部四年目で阪神大学リーグの三部に所属し、現在の部員は一年から三年生まで二十六人ですが、これから部員を増やします。一年以内に一部まで上がるぐらいの気持ちでやるようにハッパをかけているんです。

 村上: ことしから監督になった鈴木英之さん(駒大出)は昨年まで神戸製鉄の監督を務めたキャリアの持ち主です。

 井箟: 鈴木監督は神戸製鋼の野球部が休部になったのを契機にウチへ来てもらったんですが、申し分のない球歴ですからね。高校はPL学園の出身で清原、桑田の一級上、外野手で三番を打ち、甲子園の優勝経験者。東都大学リーグでは首位打者も獲得しているし、神戸製鋼時代は選手で十年連続で都市対抗に出場した実績もある。アマ球界のエリートで部員たちの信頼も違うし、人脈も豊富だから、チームに活気が出てきます。

 村上: 来年の新入部員の選別をするセレクションも実施されたとか。

 井箟: (関西国際大としては)初めての試みで八月二十九、三十の二日間、大学グラウンドで行い、全部で五十七人が集まりました。想像以上に多かったですね。四国から明徳義塾、高知、徳島商、宇和島東、地元の兵庫県からは東洋大姫路、神港学園、市尼崎などから受験者があり、その中には甲子園出場組が七人含まれていました。三十人ぐらいの合格者を予定していますが、今から楽しみですね。

 村上: 同じ野球でも立場がプロからアマへ変わられたわけですが、最後に今後のプロ、アマ関係についてはどうあるべきだとお考えですか。

井箟: 指導者についてプロ、アマの壁をなくしてほしい。現在はプロ野球出身者が高校野球の監督になるためには教員資格の取得後、二年の教員歴が必要とされる一方、大学の監督になる道は開かれていないなどルールがまちまちになっている。サッカーの場合は少年がプロのJリーグ選手とも自由に交流できるシステムになっており、このままではスポーツ少年はますますサッカーヘ流れてしまいますよ。

=おわり

(03.9.6) 産経新聞