【11】 小さな剛球投手 〜記録と記憶に生きて
                                                                  

元阪急ブレーブス投手 山口高志さん
聞き手 村上敏彦記者

ファンの視線励みに精進を

 村上: 趣味の話をしましょう。プロ野球選手はゴルフをする人が多いが、山口さんも例外ではなかったですね。

 山口: チームの先輩の影響もあって、二年目のオフからクラブを握りました。三十歳過ぎまでの五、六年間はオフの二ヶ月で四十日ぐらいゴルフ場通い。打ちっ放しなどの練習はほとんどせず、ぶっつけの本番タイプでした。ハンディは球団で十三、四までいったと思いますが、その間に自分が教えた簑田浩二や佐藤義則(現阪神投手コーチ)の方がうまくなったこともあって、ゴルフ場へ足を運ぶ回数が減っていきました。

 村上: ゴルフはそれほど好きというわけでもなかったんですか。

 山口: よいスコアを出すよりも、気の合う連中とワイワイやりながら(コースを)回るのが楽しみでした。ラウンド中に茶店でビールを飲んだり、終わってからレストランで一杯やるのも楽しかった。一緒に回る相手は高校、大学の野球部仲間が多かったですね。シーズン中は暇がなく、彼らとはオフしかつきあえないということもありましたね。

 村上: 現役を終えてからは魚釣りが最大の趣味とか。

 山口: 子供の頃、川釣りはしていたが、海釣りは阪急で一緒だった加藤安雄(現阪神二軍コーチ)に教えてもらったんです。魚釣りは金がかからないし、ストレスの解消にもなる。オリックスのコーチ時代には沖縄の糸満キャンプ中、休日は釣りに出かけ、宮古島キャンプでは一人で朝から夕方までサオを垂れていました。チヌ(黒鯛)を狙うんです。

 村上: ふだん、よく行く釣り場はどこですか。

 山口: 芦屋浜の埋立地です。ぼくは酒飲みだから、選手時代から車を持たず、免許も持っていない。だから西宮の自分の家から自転車で行くんです。ここでも岩壁ぎわでチヌを狙う。釣れる時期は四月から十月。じっくりマイペースで糸を垂れ、四時間ぐらいで五、六枚釣れますかね。大きいのは四十センチ級がかかります。

 村上: 釣った魚を食べるのも楽しみでしょう。

 山口: 刺身だけでなく、鯛めしにしたり湯引きにしても、おいしいですよ。さばくのに手間がかかるので「魚が温まってしまう」と女房は心配もしますが、調理は自分でします。

 村上: 加藤氏が今年、中日から阪神へ移籍して釣りの楽しみが増えましたね。

 山口: オフには和歌山の釣り場にも行きます。加藤と一緒の時は二人ですが、静かに釣りをしていると、自然に雑念から解放され、心のリフレッシュもできる。ゴルフとは違ったメリットがありますよ。

 村上: 加藤氏とは二軍で投手コーチとバッテリー・コーチの関係ですが、最後に阪神の若手投手への助言は。

 山口: 人気チームの中でおごりのないようにしながら、恵まれている面を自分の力に結びつけてほしい。言いかえれば、いつも注目されていることはプロ野球選手として光栄でもあり、その熱い視線を励みにして仕事の野球に精進してほしいということです。    =おわり
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若手投手のおごりを戒める山口さん。若手を鍛え、阪神黄金時代をつくってほしい  ※(写真略)


(04.2.14) 産経新聞