すぽーつアミーゴ    藤井康雄&星野伸之引退企画 
【2002.12.10 KTV】

----現役を引退して今の率直な気持ちを
藤井:すぐ2軍のコーチという仕事に入ったんで、まあそういう気分じゃないですね。まず本当、次の仕事ということで。
星野:ホッとしてますね。辞める原因が頻脈っていう。去年の8月くらいになって、それからずっと投げる時も気分が悪かったりとか、もう限界だなと。この病気でなかったら恐らく続けていたと思う。
----星野さんは今後?
星野:関西テレビさんの方でお世話になることになりました。解説者ということで。
 ----お2人はオリックスで一緒にプレイされてたんですよね。それはどれくらいの期間ですか?
藤井:14年やね
----入団は星野選手の方が早いのに(84年)藤井選手の方が年上と。高校からと社会人。
旭川工業高校…え?北海道なんですか?

旭川工業高校にいた頃、星野選手は全くの無名選手だった
冬が長くロクに練習もできない北海道で星野投手が野球部に入った理由、それは就職に有利だと思ったから
そんな星野投手にプロから誘いの声がかかったのだ

----就職に有利だと思ったから?
星野:僕らの時は野球をやっとけば真面目っていうようなね。
----甲子園には行ったの?
星野:行ってないです。2回戦負けです。春の大会でたまたま北海道大会に出たんですよ。
それも1回戦で負けたんですけど。その時にたまたまプロのスカウトが見に来て、他のチームの選手を見に来てみたいで。その時に僕がたまたま投げてて目にとまったらしいですけどね。
----すごい細いですよね?
星野:68、9kgだったんで、183cm。(一般男性標準体重:183cmは73.7kg)
藤井:コーチから「食べろ」と「太れ」と
星野:無理だったんですよ、食べれない、小食なんですよ。とりあえず最初にビール飲めって言われて、そしたら太るからって。ビール飲んだらお腹いっぱいになっちゃうじゃないですか、それで食べれない。
----(笑)可愛いっすね、給食遅い小学生やん。遅かったでしょう?
星野:遅いし、残してた。
藤井選手は社会人の名門、プリンスホテルを経て当時としては遅い24歳でプロ入りを果たした
1年目から勝負の歳となる藤井選手は初めてのキャンプでチームに隠していたことがあった
その秘密とは?

藤井:ドラフトにかかる年の春に肩を壊してそれを黙ってたんですよ(笑)
----待ってください、それ詐欺ですよ
藤井:多分スカウトの人は怒られたと思いますよ。入ったら勝ちじゃない?(笑)

藤井:僕は本当は左利きなんですよ。で、野球以外は全部左で何でも。
自分で困って「監督すみません、僕左でも投げれるんで」っ言ってしまったんですよ。
それで両利きのグローブをね。
左でもね60mくらいは投げてた。でも実際、さあ左でボールは投げられます…でも捕れなかったです。
受けるのが出来なくて、で、断念してとにかく打つことで目立つしかない。
----当時の野手がブーマー、福本さん、石嶺さん、すごいメンバーだったんですね
藤井:プロに入ってね、打つことに関しては僕は自信があったから、フリーバッティングでもブーマーに負けないくらいの飛距離は出してましたよ。 飛ばすコツってのはあると思います。
持って生まれたものか、努力して飛ばせるようになるものなのか2通りあると思うけど、僕の場合は持って生まれたものだと思いますね。
----1990年にね、星野投手にとんでもない事件が起こるんですよ、星野選手ならではの事件…突風にあおられて飛んでいった?
星野:ああ、そういうのもありそうですね(笑)
----実はこういうことだったんです。キャッチャーの中嶋が星野の球を素手でキャッチ、え?(笑)失礼でしょう、星野選手に対して
藤井:見てる俺らは止まったよ、一瞬。ええウソーっていう
----中嶋選手もふと、こう捕ってしまったんですか?
星野:あいつが言うには「ミットが行ったんだけど届かなかったから手でいきました」という感じだったんだけど
----いや、普通でしたよ。ミット出す気なかったですやん、あれは
星野:出す気ない(笑) ものすごい謝りに来ましたよ、後で
----(爆笑)そらそうでしょう
藤井:反対に80キロくらいでカーブを投げる技術っていうのは、なかなか出来るものじゃないんですよね
星野:カーブを多分待っててもまだ遅い、まだ来ないっていう感じだと思いますよ
----投げ方、おっかしいですよね?
星野:投げる時にこっちに(背中側から大きく左手が)出てたんですよね。バッターからよく見えるらしいんですよ。
それをこういう風(身体に隠れるよう水平に腕を持ち上げる)に投げようと思ったんですよね。
そしたらそれを忘れて、こういう風(肘を水平に持ち上げる)になって行ったんです。
このスローカーブ、バッターからみると一度視界から消えるほど大きく変化している
更にこの投球フォーム、肘を折り畳むように改良された星野投手独特の投球フォーム
バッターはこの変則フォームの為にボールの出所がギリギリまで見えないのだ
そして更に星野投手が武器にしていた球種があるという
----2種類しか球種がなかったんですよね。ストレート、カーブね、他は?
星野:フォークおぼえて10勝ができるようになった
----どうやっておぼえたんですか?
星野:通常は縫い目に指をかけても1つとかなんですが、2つかける人はあまりいないはずなんですよ
----なるほど。それ縫い目捜してるうちにバレるんちゃいますの?
星野:慣れてきたらこう、これストレートでしょう?(縫い目に指2本揃える)これこうやって(人差し指を軸に)くるっと回すんです。そうすると簡単に握れるというか。ただ、こうして回した時にグローブがピッって動くからそれでばれたりもしましたよ。
----はぁ〜、打者ってそこまで見るの?
星野:見てますよ、ずるいでしょう?
藤井:それも見る技術
----へえ、なるほどねえ
こうして星野投手は自らの投球術を磨き上げ、11年連続2桁勝利・通算176勝をあげる名投手となる