【2】オリックスOBの指導
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「子供とプレーできるのがうれしい」

 「ちゃんとグローブのポケットで捕って」「もっとスムーズにバットを振って」と声が響く。 
 大阪府豊中市の市立大池小学校で開催された少年野球教室。地元の少年野球チーム「大池インディアンズ」の選手たち約60人が、プロ野球オリックス・ブルーウェーブのジャンパーを着た外国人男性の話を真剣な表情で聞いていた。
 「一生懸命やったら、何かいいことがあるよ」と小さな選手たちに声をかけたのは、ロベルト・バルボンさん(70)。昭和30年から十年余りにわたってオリックスの前身、阪急ブレーブスでプレー。その後、球団職員になり、外国人選手の通訳を務めるなどおなじみの往年の名選手だ。
 大池インディアンズの主将、新田隼司君(11)は「元プロ野球選手は偉大な感じがした。とてもわかりやすかった」と感激した表情。同チームの副代表、麻生真吾さん(45)は「バルボンさんの指導が子供たちの刺激になっているようです。この経験が将来、必ず役立つはずです」と話す。
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 市民球団を目指すオリックスは、神戸に本拠地を移した平成3年ごろからOBを指導者にした野球教室を始めた。他球団が開催している野球教室では現役選手が指導するが、OBをスタッフにするのは珍しい。
 球団ボールパーク事業部の岡村義和さんは「現役選手が指導する場合、シーズンオフなど期間が限られる。OBならいつでも開催できますから」と説明する。
 野球教室は年間約40回、関西各地で行われており、校長先生を務めるバルボンさんは「子供たちと一緒に、大好きな野球が出来るのがうれしい」と笑顔をみせる。
 平成13年に6年間の現役生活にピリオドを打ったオリックスOB、田中雅興さん(25)も、バルボンさんとともに行動する。現在は球団コミュニティー課の職員として働きながら、子供たちの野球指導に情熱を燃やす。「教えるのは基本的なことばかりですが、とても楽しい」と田中さん。
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 田中さんは昨年4月から月1回、神戸市西区のバッティングセンター「メジャードーム伊川谷店」で、地元の小中学生を対象にした打撃教室を開催している。一緒にプレーしたイチロー選手(現マリナーズ)ら現役選手を例にあげた分かりやすい指導が好評だ。
 一人千円で、75球分。田中さんの指導を受けるのは3回目という神戸市西区の中学一年、生藤直也君(12)は「バットの振りが鋭くなってきました」という。
 同店の朝田守マネージャーは、「地域の人たちのために企画しましたが、球団のOKが出るとは思わなかった。最近では希望者が殺到して断るのも大変です」とうれしい悲鳴をあげる。
 今年からは地元の少年野球チーム10チームを定期的に指導する「神戸ボールパークアカデミー」が開催される予定。神戸学院大(神戸市西区)と連携して、少年野球のレベルアップに力を入れる方針だ。
 これからさらに大忙しになりそうだが、田中さんは「神戸市内のすべての少年野球チームを回りたい」と目を輝かせた。


(03.4.1) 産経新聞 [格清政典]