【3】マスコットは人気者 
                                                                  >>Next
地域交流でファン層拡大へ

   「ネッピー、こっち向いて−」。神戸市須磨区の平田幼稚園に園児たちのかわいい声が響いた。プロ野球オリックス・ブルーウェーブのマスコット「ネッピー」は、子供たちの人気者だ。
 ネッピーの機敏な動きに合わせて園児達も楽しそうにとびはねる。綱引きや玉入れでは、ネッピーは応援役だ。
 続いて柔らかいボールを使ったティーバッティングがスタートする。初めて握るバットに少し緊張した表情の園児たち。バットにボールが当たると、友達が懸命にそれを追いかける。
 いよいよネッピーが打席に登場する。ところが、ボテボテのゴロになり、ネッピーは少し落ち込んだ様子。子供たちの笑い声があがった。
 上内義晴園長(65)は「園児たちにとって、いい思い出になったと思います。ネッピーには来年以降も遊びに来てほしい」と目を細めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 市民球団を目指すオリックスは、本拠地を神戸に移した平成3年ごろから、「ネッピーと遊ぼう!」と題して地元の幼稚園や保育園にネッピーを派遣している。
現在では年間50カ所を訪問しているが、問い合わせは多く地元では引っ張りダコの人気という。
 球団がターゲットにしているのは、地元のファミリー層。子供たちが「ネッピーに会いたい」と訴えれば、家族そろって球場に足を運んでくれるとの計算がある。
 球団ボールパーク事業部の岡村義和さんは「ブルーウェーブは知らなくても、ネッピーは子供たちに浸透してきています。ファン層の底辺は着実に広がっていると思います」と少しずつ手応えを感じている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 こうした球団の姿勢に、選手たちも積極的に協力している。 
 昨年、主力選手たちが中心となって神戸市内の小学校三校を訪問し、「夢の実現」をテーマに児童に熱く語りかけた。今年も実施する方向で調整を進めている。
 選手会長の三輪隆選手(34)は「子供たちは素直に聞いてくれますし、選手たちの間でも好評です。地元の人たちが家族で気軽にきてもらえるような身近なチームにしたい」と話す。
 さまざまな地域交流活動を通じてファン獲得を進める球団だが、実際に観客動員に結びついているか、となるとまだまだ疑問符がつく。
 三輪選手は「これからだと思います。やはりチームが強くならないと、お客さんも集まってくれませんからね」と、最下位に終わった昨シーズンからの奮起を誓う。
 オリックスOBで、球団職員の田中雅興さん(25)は現役時代の経験を踏まえてこう語る。
 「満員の球場で野球がしたいというのは、全選手共有の願いだと思います」


(03.4.2) 産経新聞 [格清政典]