【11】 球界12年 言わせてもらいます
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オリックス前代表 井箟重慶さん
聞き手 村上敏彦記者

乱打線傾向 −球界首脳は気にするべきだ

 村上: オリックスは今季、二年連続の最下位が確定的な不振が続いています。井箟さんは三年前まで球団代表を務めておられましたが、チームの現状について、どう見ていますか。

 井箟: 開幕後まもなく、石毛監督が(成績不振で)更迭されたが、コーチから昇格したレオン監督のさい配にも問題があると思います。投手起用で先発と救援の色分けができておらず、流動的な使い方で毎試合、勝ちにいっている。これでは投手は落ち着かず、疲労も大きい。監督経験がなく、一生懸命、ひとつでも多く勝ちたい気持ちのあらわれだろうが、捨て試合をつくるくらいでなければ、長いシーズンで結果は出せない。

 村上: それにしても、負けが多すぎて戦い方にも淡泊なところがあるように思えます。

 井箟: 戦力不足の問題もあるが、プレーに粘りが見られないのはコーチ陣のまとまりがないので、チームプレーに欠け、バラバラです。いまのコーチ陣は前監督体制下のスタッフ。特に外部から石毛氏に招かれた重要なポストのコーチは今年限りでクビを覚悟している。そんなムードだから、選手達は契約更改に備えて自分個人の数字を残すことに頭を切り替え、チームプレーで必死になろうとはしない。このあたりはシーズン中に監督を代えることの難しさでしょう。

 村上: オリックスは今季、29失点(対ダイエー戦)というパ・リーグ最多失点記録の大敗を喫しているが、ことしは両リーグともスコアの大きい試合が目立ちます。

 井箟: ラグビー並のスコアは、野球としては緊迫感に欠ける大味の試合ということになる。原因としては飛ぶボールの影響、投手の制球力の低下などを指摘する声があるようだが、こういう乱打線の傾向は球界首脳が気にすべき問題じゃないですかね。打者は打撃用のマシンで好きなだけ練習ができ、バットも改良が可能だが、投手の練習方法は限られ、肩は消耗品とみられている。条件的には打者の方が有利なんだから、投手の立場を配慮してもおかしくない。

 村上: 投打で力関係のバランスをとるには、どんな方法が考えられますか。

 井箟: 試合の使用球に問題があるのなら、まず各球団が契約しているメーカーのボールの規格検査について、弾む高さなどの許容範囲をもっと狭くする方法がある。そうすれば、球の飛距離の差を最小限にできる。ストライクゾーンの幅は、去年高めに広げたのを今年はパ・リーグの監督と審判部との話し合いで少し低めに戻したということですが、これもコミッショナーの指導で間単に変えないシステムにする必要があると思います。

 村上: 大リーグでは「審判は演出家たれ」の格言があるそうですが、日本の現状については。

 井箟: 大リーグの審判は勝負どころではキチンとしたジャッジをするが、点差が大きく開いた場合は試合の進行も考慮する。外角のストライクゾーンを甘くするなど、投手に有利な判定でゲームを引き締める。その点、日本の審判は最後まで真面目なジャッジをする。しまらない大量点の試合は、融通のきかない審判にも責任があるはずですよ。


(03.9.5) 産経新聞